世の認識不足に泣く
私の皮膚障害がきっかけで母は「ピンク・アイス」と言う名のパックを開発しました。現在では別の名で販売されています。当時、「ピンク・アイス」の名はあるアメリカの会社がすでに商標権を出願していたためですが、今ではこの商標は私に帰属しています。「ピンク・アイス」の物語は、それ自体で一冊の本になるでしょう。いつの日か私は、その偉大なる成功、その破綻、そしてその栄光に満ちた再起のドラマを書いてみたいものです。
私の母は、自然化粧品の化学者としてますます有名になっていきました。信じられないことですが、当時自然化粧品というものがいかに重要なものであるか、正しく理解している化学者はひとりもいませんでした。彼らは、人々が欲しているのはせいぜいメイクアップを拭い取るクレンジングだとか、皮膚の表面をソフトにするクリームだとか、色つきのメイクアップ化粧品ぐらいであると考えていたのです。けれども、だれもが認識しなければならないことは、ちょうど私たちの体が滋養に富んだ食品を必要としているように、皮膚もまた、日々新鮮な滋養を欲しているのだということなのです。けれども、従来の化学物質をいったん受け容れてしまった後では、ご婦人や男性の認識を変えさせることは容易なことではありませんでした。肌の健康と美容のためには、毎日滋養が必要であるという認識を植えつけることは、一朝一タに指導できることではないようです。