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誕生

12ロサンゼルスの東、ちょうどカリフォルニア半島のつけ根のあたりに、サン・ベルナルディーノという美しい山脈があります。ヨーロッパ人たちは、その山脈の美しさをよくスイスのアルプスにたとえます。南に向かって壮大に広がった裾野は、小さいながら開静で旅店瀟洒な街並をもつサン・ベルナルディーノの町を抱いています。私の両親は、この町のスプルース街に居をかまえておりました。

 2月7日、雪もようのたいへん寒い晩の午前2時、私はこの家で呱々の声をあげました。星占いに興味をおもちの方のために申し添えておきますと、私の星座は〝みずがめ座″ということになります。

 私を出産するとき、母の分娩はたいへん長く苦しいものだったそうですと言うのも、母はどちらかと言うと小柄な女性で、私の方は8ポンド半にまで生育し低宝です。難産のきざしが見えはじめたので、私は鉗子分娩によって人為的にこの世に引き出されることになりました。ご存知のように、鉗子分娩とは、ハサミのような器具で頭をはさんで引っぱりだす方法ですから、私の頭はかなりゆがんだりへこんだりして生まれて来たということです。けれども、私の母方の祖母は助産婦の経験かあり、何人もの赤ちゃんを取りあげたことがあるので、このとき彼女は少しもあわてず、練ったパン粉の形をととのえるように、ひずみを修正してくれました。生まれたての赤ちゃんというものは、それほど柔軟なものなんてすね。おかけで私は、ピカソが描く赤ちゃんから、レンブラントの赤ちゃんへと変身したわけです。

 一人の人聞がこの世に生を受けること、それはきわめて厳粛な儀式です。母はすべてのエネルギーと全存在をかけてこの荘厳な事業をやり遂げました。私もまたこの世の光、この世の空気を獲得するために、無から有への長い神秘のトンネルをくぐりぬけました。そして父も始終分娩室の中にいて、断じて母のかたわらを離れようとせず、母と私に愛を注ぎ込み、励ましつづけたのでした。

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